ここまで、スイッチ、ルーター、無線LANアクセスポイントの役割を見てきました。
これらは主に、機器同士をどうつなぐかに関わるものでした。
ただ、会社のネットワークは「つながればOK」ではありません。
会社のWebサイトは社外から見られる必要がありますが、社内PCや社内サーバまで誰でも自由にアクセスできたら困ります。
そこで必要になるのが、どの通信を通して、どの通信を止めるかという考え方です。
その代表的な仕組みがファイアウォール(FW)です。
ファイアウォールは、通信の条件を確認して、許可するか拒否するかを制御する機器や機能です。
よく建物の入口にある受付や警備にたとえられます。
誰でも同じように通すのではなく、条件を見て「ここまでは通してよい」「この先は通さない」と判断します。
ネットワークでも、送信元、宛先、通信の種類などを条件にして制御できます。
この講座のシミュレーターには、ファイアウォールのルールまで設定された状態で構成が用意されています。
受講者がFWの設定を作る必要はありません。
ここでは、同じ社外PCから送った通信でも、宛先や通信の種類によって結果が変わることを確認します。
構成はこうです。
| 機器 | IPアドレス | 立場 |
|---|---|---|
| GaibuPC | 203.0.113.10 |
社外のPC |
| FW1 | 203.0.113.254 / 192.168.1.254 |
社内と社外の境目 |
| PC1 | 192.168.1.11 |
社内のPC |
| WebSrv | 192.168.1.100 |
社外にも公開しているWebサーバ |
FW1に2つのIPアドレスが付いているのは、片方の足を社外に、もう片方を社内に置いているからです。
GaibuPC
│
FW1
├── PC1
└── WebSrv
社外PCから社内PCへ送ります。
右のシミュレーターで GaibuPC をダブルクリックし、開いた画面の上にある コマンドプロンプト タブを選びます。
ping 192.168.1.11
実行すると、次のように表示されます。
192.168.1.11 に ping を送信しています 32 バイトのデータ:
203.0.113.254 からの応答: 宛先ホストに到達できません。
203.0.113.254 からの応答: 宛先ホストに到達できません。
203.0.113.254 からの応答: 宛先ホストに到達できません。
203.0.113.254 からの応答: 宛先ホストに到達できません。
192.168.1.11 の ping 統計:
パケット数: 送信 = 4、受信 = 0、損失 = 4 (100% の損失)
「203.0.113.254 からの応答: 宛先ホストに到達できません。」と出ました。
よく見てください。応答しているのは、送った相手(192.168.1.11)ではなく、途中にいるFW1(203.0.113.254)です。「そこへは通せません」と、FWが答えています。
ここで重要なのは、社内PCが壊れているわけではないことです。
FWのルールによって、社外から社内PCへの通信が止められています。
次に、同じ社外PCからWebサーバへアクセスします。画面は開いたままで構いません。
同じ画面で、続けて次を実行します。
curl 192.168.1.100
実行すると、次のように表示されます。
192.168.1.100 に接続しています...
HTTP/1.1 200 OK
WebSrv: 社外にも公開しているWebサーバです
こちらは中身まで返ってきました。Web通信が許可されているからです。
もう1つ試してみましょう。いま中身が見られた WebSrv に対して、今度は ping を送ります。
同じ画面で、続けて次を実行します。
ping 192.168.1.100
実行すると、次のように表示されます。
192.168.1.100 に ping を送信しています 32 バイトのデータ:
203.0.113.254 からの応答: 宛先ホストに到達できません。
203.0.113.254 からの応答: 宛先ホストに到達できません。
203.0.113.254 からの応答: 宛先ホストに到達できません。
203.0.113.254 からの応答: 宛先ホストに到達できません。
192.168.1.100 の ping 統計:
パケット数: 送信 = 4、受信 = 0、損失 = 4 (100% の損失)
止まりました。 さっき中身まで見られた相手なのに、ping は届きません。
ここから分かるのは、FWは「相手」ではなく「通信」を選んでいるということです。同じ宛先でも、通信の種類が違えば扱いが変わります。
つまり、同じ社外PCからでも、
社外PC → 社内PC 拒否
社外PC → Webサーバ 許可
という違いがあります。
これがファイアウォールの基本的な役割です。
ファイアウォールは、通信をすべて止めるための機器ではありません。
会社のWebサイトなら、社外の利用者からWebサーバへアクセスできる必要があります。一方、社内だけで使うサーバは、社外から直接アクセスできないようにしたい場合があります。
そのため、
必要な通信は通す
不要な通信は止める
というルールを設定します。
科目Bでは、ファイアウォールの細かな設定コマンドを書く問題よりも、「どの通信が通るのか」「この経路変更でFWを通らなくならないか」といった考え方が重要になります。
今回のハンズオンでは、ping と curl で結果が変わりました。
これは、ファイアウォールが通信を一括して「通す・止める」と決めているわけではなく、通信の種類などを条件に判断できるからです。
この感覚を持っておくと、後で「Web通信だけ許可する」「社内からの管理通信だけ許可する」といった構成を理解しやすくなります。
ここまでで、IPアドレス、サブネットマスク、スイッチ、ルーター、無線LAN AP、FWという、ネットワークの基本的な機器や考え方を学びました。
次のトピックからは、Webサーバ、DNSサーバ、DHCPサーバなど、基本情報技術者試験でよく出てくるサーバの役割を一つずつ見ていきます。