ITパスポートと基本情報の違いとは?難易度・勉強時間・出題内容を比較

公開日: 2026-09-23

ITパスポートと基本情報、結局どっちを受ければいいの?

名前は聞いたことがあるけれど、違いがはっきりしない。そんなモヤモヤを抱えていませんか?

どちらもIPAが実施する国家試験で、ITの基礎を問うという点では似ています。ただ、狙っている受験者も、求められる力も、実はかなり違います。

違いを知らないまま決めると、遠回りになることがあります。この記事では、2つの試験を並べて比べながら、自分に合うほうを選べるように整理していきます。

私はエンジニアとして10年以上、Webシステムの開発や運用に携わってきました。新人や異動してきた方から、この2つのどちらを受けるべきかと相談されたことも何度もあります。

そのたびに伝えているのは、試験の名前ではなく、その先で何をしたいかで選ぶということです。今日もその考え方で進めます。

試験そのものの全体像を先に押さえておきたい人は、親記事から読むと位置づけがつかめます。

【関連記事】基本情報技術者試験とは?試験内容・難易度・勉強法を初心者向けに解説

ITパスポートと基本情報の違いとは

まずは大づかみに、2つの試験がどういう人を想定しているかを見ていきましょう。ここが分かると、細かい違いにも納得がいきます。

ITパスポートは、ITを使う側のすべての社会人に向けた試験です。営業や事務の方でも、ITの基本を知っておくための入口という位置づけになっています。

一方の基本情報技術者試験は、ITを作る側、つまりエンジニアを目指す人の登竜門です。システムを設計したりプログラムを書いたりする仕事の土台を問われます。

対象者と出題形式を比べる

違いを一覧にすると、次のようになります。数字はIPAの公開情報に基づくものです。

項目 ITパスポート 基本情報技術者試験
想定する人 ITを使うすべての社会人・学生 ITエンジニアを目指す人
試験の構成 1つの試験 科目Aと科目Bの2つ
試験時間 120分 科目A 90分/科目B 100分
出題数 100問 科目A 60問/科目B 20問
合格基準 総合点と分野別の点の両方で基準を超える 科目A・科目Bのそれぞれで600点以上(1000点満点)
プログラムの読解 擬似言語が少し出る 科目Bの中心が擬似言語とアルゴリズム

表の中で、いちばん大きな差は最後の行です。基本情報には科目Bがあり、ここでプログラムを読む力が本格的に問われます。

ITパスポートにも擬似言語の問題は出ます。ただ、出題全体のなかのごく一部で、分からなくてもほかの分野で十分カバーできる量です。

合格基準の考え方も違う

ITパスポートは、総合点に加えて、ストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系の分野ごとにも基準があります。どれか1つが極端に低いと、総合点が足りていても不合格になります。

基本情報は、科目Aと科目Bがそれぞれ独立して判定されます。科目Aがどれだけ高得点でも、科目Bが基準に届かなければ合格できません。

つまり、ITパスポートは広く浅くを求める試験です。基本情報は、広さに加えて、プログラムを読むという深さを求める試験だといえます。

難易度と勉強時間の違い

次に、多くの人がいちばん気になる難しさの差を見ていきます。数字だけで判断せず、どこで差がつくのかに目を向けてみてください。

合格率は年度によって上下するので、ここでは具体的な数字には触れません。確かなのは、受験者層を考えても、基本情報のほうが一段上の試験だということです。

勉強時間の目安を比べる

勉強時間は、ITに触れてきた経験によって大きく変わります。あくまで目安として、初学者が準備にかける期間の感覚を並べてみます。

状況 ITパスポート 基本情報技術者試験
ITにほとんど触れたことがない 1〜2か月ほど 3〜6か月ほど
仕事や授業でITに触れている 数週間ほど 2〜3か月ほど
プログラミング経験がある 短期間で届く人が多い 科目Aの暗記が中心になる

期間に幅があるのは、1日に使える時間が人によって違うからです。数字にとらわれすぎず、自分の生活に置き直して考えてください。

注目してほしいのは、基本情報の伸び方です。プログラミング経験の有無で、必要な時間がぐっと変わります。

難しさの正体は科目Bにある

基本情報の科目Aは、ITパスポートの延長線上にあります。用語や計算の範囲は広がりますが、勉強のしかた自体は似ています。

ところが科目Bは、まったく別の力が必要です。コードを読み、変数の値がどう変わるかを頭の中で追いかける力です。

基本情報が難しいと言われる理由の多くは、ここに集まっています。つまずく場所をもう少し詳しく知りたい人は、こちらも参考にしてください。

【関連記事】基本情報技術者試験の難易度は?初心者がつまずく場所を解説

出題内容の差を擬似言語で見てみる

言葉で説明するより、実際のコードを見たほうが差は伝わります。ここでは、科目Bで出てくるような擬似言語を1つ読んでみましょう。

次のコードは、配列の中から、基準値以上の値がいくつあるかを数える関数です。短いですが、科目Bの問題を解くのに必要な要素がひととおり入っています。

○整数型: countOver(整数型の配列: data, 整数型: border)
  整数型: count ← 0
  整数型: i
  for (i を 1 から data の要素数 まで 1 ずつ増やす)
    if (data[i] ≧ border)
      count ← count + 1
    endif
  endfor
  return count

たとえば data が {3, 8, 5, 10}、border が 5 のとき、戻り値はいくつになるでしょうか。少し考えてから、次の表を見てください。

ループを1回ずつ追うと、変数の値は次のように変わります。科目Bでは、この追い方ができるかどうかが得点を左右します。

i data[i] data[i] ≧ 5 count
1 3 0
2 8 1
3 5 2
4 10 3

答えは3です。5ちょうどの値も数えるので、≧ と > の違いを読み落とすと2と答えてしまいます。

ITパスポートの擬似言語は、この程度の短いコードを読めれば十分な場合がほとんどです。基本情報の科目Bでは、これが入れ子になったり、配列の要素を入れ替えたりする処理が続きます。

実務でも、境界の値を1つ読み間違えるだけで不具合になります。私自身、以上と超えるの取り違えで、集計結果が1件ずれるバグを直した経験があります。

擬似言語という書き方そのものがまだピンとこない人は、先にこちらで基本を確認しておくと読みやすくなります。

【関連記事】擬似言語とは?IT初心者にもわかる意味・書き方・プログラミングとの違いをやさしく解説

どっちを受けるべきか

ここまでの違いを踏まえて、どちらを選ぶかの判断基準を整理します。迷っている人は、自分がどの行に当てはまるかを探してみてください。

あなたの状況 おすすめ
エンジニアとして働きたい、または働き始めた 基本情報
情報系の学生で就職に活かしたい 基本情報
事務や営業で、ITの基本を知っておきたい ITパスポート
ITの勉強が初めてで、まず自信をつけたい ITパスポートから始めてもよい
プログラミングを少しでも学んだことがある 最初から基本情報

エンジニアを目指しているなら、結論は基本情報です。ITパスポートを経由すると、同じ範囲をもう一度勉強し直す時間がかかります。

ITパスポートから始めてもよい人

ITの用語をほとんど知らず、勉強そのものに不安がある人もいるでしょう。そういう場合は、ITパスポートで学習の習慣と基礎用語を固めるのも1つの方法です。

ITパスポートで学んだ内容は、基本情報の科目Aでそのまま役立ちます。無駄にはならないので、安心してください。

ただし、そのまま止まらずに次へ進む前提で考えるのがおすすめです。ITパスポートから基本情報へ進む流れは、こちらで詳しくまとめています。

【関連記事】ITパスポートから基本情報技術者試験へ進むには?ステップアップ方法

最初から基本情報を選ぶほうがよい人

エンジニア職を目指している人は、最初から基本情報に向かうほうが近道です。職場で評価されやすいのも、作る側の知識を示せるこちらの試験です。

私の周りでも、新人研修の一環として基本情報の取得を勧める現場は少なくありません。実務で使う考え方と重なる部分が多いからです。

不安なのは、きっと科目Bの擬似言語でしょう。でも大丈夫です。擬似言語は、正しい順番で慣れていけば、プログラミング未経験からでも読めるようになります。

2つの試験についてよくある誤解

選ぶ前に、相談の場でよく耳にする思い込みも解いておきます。誤解のまま決めると、あとで遠回りになりやすいからです。

どれも、半分は当たっていて半分は外れている、というものばかりです。自分が同じように考えていないか、確かめてみてください。

よくある誤解 実際のところ
ITパスポートを持っていないと基本情報は受けられない 受験資格はなく、いきなり基本情報を受けてよい
基本情報はプログラミング経験者しか受からない 擬似言語は未経験から学ぶ前提で作られている
ITパスポートの勉強は基本情報で役に立たない 科目Aの範囲と大きく重なっている
両方取らないと意味がない 目的に合うほうを1つ取れば十分なことが多い

いちばん多いのは、1つ目の順番の誤解です。ITパスポートは基本情報の前提条件ではないので、エンジニアを目指すなら最初から基本情報を受けて構いません。

基本情報は未経験だと無理という思い込み

プログラミングをしたことがないから基本情報は無理だ、と最初からあきらめる方もいます。気持ちはよく分かりますが、それはもったいない判断です。

擬似言語は、特定のプログラミング言語を知らなくても読めるように作られた書き方です。日本語に近い表現で書かれているので、慣れれば読み進められます。

実際、私が一緒に働いてきた人のなかにも、未経験から基本情報に合格して開発の仕事に入った人がいます。最初の数週間は苦労していましたが、コードを毎日少しずつ読むうちに、変数の動きが自然に追えるようになっていました。

両方取るべきかという迷い

ITパスポートを取ってから基本情報も取るべきか、という質問もよく受けます。これは目的しだいで答えが変わります。

エンジニアとして評価されたいなら、最終的に必要なのは基本情報です。ITパスポートを取ったあとで基本情報も取るなら、2回ぶんの受験準備をすることになります。

一方、ITパスポートで学習の手ごたえをつかみ、その勢いで基本情報へ進むなら、遠回りに見えて自分に合った道になることもあります。大切なのは、次の試験までの間を空けすぎないことです。

基本情報を選んだ人が最初にやること

基本情報に挑戦すると決めたなら、最初の一歩は科目Bの全体像をつかむことです。科目Aから始めたくなる気持ちも分かりますが、先に科目Bを知っておくほうが計画を立てやすくなります。

科目Bは慣れるまでに時間がかかる分、早く触れた人ほど有利です。どんな問題が出て、どこから手を付ければよいかは、こちらの記事で整理しています。

【関連記事】基本情報技術者試験の科目Bとは?擬似言語・アルゴリズム対策を初心者向けに解説

科目Aとあわせた全体の進め方を知りたい人は、勉強法の記事も役立ちます。

【関連記事】基本情報技術者試験の勉強法|科目Aと科目Bの進め方を順番に解説

擬似言語は、読むだけでなく実際に動かしてみると理解が一気に進みます。Giji Academy の擬似言語シミュレーターなら、さきほどの countOver のような関数を1行ずつ実行して、変数の変化を画面で確かめられます。

擬似言語シミュレーターで動かしてみる

無料で使えるので、ITパスポートと迷っている段階で試してみるのもおすすめです。自分が科目Bに向いているかどうかの手ごたえがつかめます。

まとめ

ITパスポートと基本情報は、似た名前でも目指すところが違う試験です。ITを使う側の基礎を問うのがITパスポートで、ITを作る側の土台を問うのが基本情報です。

最後に、今日の要点を振り返っておきましょう。

押さえどころ 内容
対象者 ITパスポートは使う側、基本情報は作る側
試験の構成 基本情報は科目Aと科目Bの2つで、それぞれ基準を超える必要がある
難しさの差 科目Bの擬似言語とアルゴリズムが最大の違い
選び方 エンジニアを目指すなら最初から基本情報

どちらを選んでも、ITの勉強を始めようと思った時点で、もう一歩前に進んでいます。迷う時間を、少しずつ手を動かす時間に変えていきましょう。

もしエンジニアの道を考えているなら、今日は擬似言語のコードを1つだけ読んでみてください。それが、基本情報への一番の近道になります。

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